DX研修を対象にした助成金9種
DX研修に活用できる助成金・補助金は、国や自治体から複数の制度が用意されています。人材開発支援助成金や、東京都独自のDXリスキリング助成金など選択肢はさまざまです。ここでは、代表的な9種類の制度について紹介します。
<DX研修を対象にした助成金9種>
制度名 | 助成率 | 上限額 | 主な対象 |
|---|
人材育成支援コース | 45〜60% | 50万円/人 | 幅広い職業訓練 |
事業展開等リスキリング支援コース | 75% | 50万円/人 | DX・新規事業向け |
人への投資促進コース | 75% | 50万円/人 | 高度デジタル人材 |
東京都DXリスキリング助成金 | 75% | 7.5万円/人(企業上限100万円) | 都内中小企業 |
IT導入補助金 | 50〜80% | 450万円 | ITツール導入 |
ものづくり補助金 | 50〜67% | 3,000万円 | 製造業・設備投資 |
キャリアアップ助成金 | ー | 57万円/人 | 正社員化 |
テレワークコース | 50% | 100万円 | テレワーク導入 |
小規模事業者持続化補助金 | 67% | 200万円 | 従業員20名以下 |
人材開発支援助成金:人材育成支援コース
人材育成支援コースでは、業務上必要なスキルを従業員に身につけさせる訓練を行った企業へ、費用と給与の一部が支給されます。
対象となる訓練は10時間以上のOFF-JT(職場外訓練)で、DX関連の研修も幅広くカバーされています。正規雇用の従業員に限らず、契約社員やパート勤務者も支給対象です。
<人材育成支援コースの助成内容(中小企業の場合)>
項目 | 助成額 |
|---|
経費助成率 | 45%(賃金要件を満たせば60%) |
賃金助成 | 1人1時間あたり800円(要件を満たせば1,000円) |
経費助成の限度額 | 訓練時間に応じて15万円〜50万円 |
企業は研修開始の1ヶ月前までに計画届を提出する必要があるため、事前準備の期間を十分に確保しましょう。
出典:人材開発支援助成金|人材育成支援コース
人材開発支援助成金:事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等リスキリング支援コースは、新たなビジネス領域への進出やデジタル化・脱炭素化の研修への支援制度です。
2022年12月にスタートした制度で、2026年度末までの期間限定で運用されています。中小企業は経費の75%まで補助を受けられ、AI活用やデータ分析、プログラミングなど実践的な研修が対象です。
<事業展開等リスキリング支援コースの助成内容(中小企業の場合)>
項目 | 助成額 |
|---|
経費助成率 | 75% |
賃金助成 | 1人1時間あたり1,000円 |
経費助成の限度額 | 訓練時間に応じて30万円〜50万円 |
対象訓練 | 10時間以上のOFF-JT |
企業は申請時に「事業展開等実施計画」の提出が必要で、人材育成支援コースより審査が厳しい傾向にあります。
出典:人材開発支援助成金:事業展開等リスキリング支援コース
人材開発支援助成金:人への投資促進コース
ITSSレベル3以上の高度なデジタル人材を育成したい企業は、人への投資促進コースを検討してみましょう。
訓練メニューは高度デジタル人材訓練と成長分野等人材訓練の2種類に分かれており、大学院での学び直しも支給対象です。中小規模の事業者であれば費用の75%まで補助を受けられ、受講時間1時間につき1,000円の賃金補填も受けられます。
<人への投資促進コースの利用要件>
- 情報通信業を主力事業としている
- 経済産業省のDX認定を取得済みである
- DX推進指標を所管省庁へ提出済みである
受講可能な講座は経産省認定の「Reスキル講座」や「マナビDX」に掲載されているプログラムに絞られています。サブスクリプション型の研修サービスも支給の対象です。
出典:人材開発支援助成金:人への投資促進コース
東京都DXリスキリング助成金
都内の中小企業がDX人材を育成する際に活用できるのが、東京都DXリスキリング助成金です。
東京都DXリスキリング助成金は、東京しごと財団が運営する制度で、研修費用の75%が助成されます。都内に本社か、主要拠点を構える中小企業が対象です。
<東京都DXリスキリング助成金の概要>
項目 | 内容 |
|---|
助成率 | 研修費用の75% |
上限額 | 1企業あたり年間100万円、1人1研修あたり75,000円 |
対象研修時間 | 1研修あたり3時間以上10時間未満 |
対象分野 | プログラミング、AI活用、データ分析、UI/UXデザインなど |
研修形態 | eラーニング、対面研修、オンライン研修すべて対応 |
企業は研修スタートの1ヶ月前までに申請手続きを済ませる必要があります。
出典:東京都DXリスキリング助成金
IT導入補助金
業務の効率・生産性改善に向けてITツールを導入したい中小規模の事業者には、IT導入補助金がおすすめです。
経産省所管の制度で、通常枠は購入費の50%まで、インボイス枠は50%〜80%まで補助を受けられます。支給上限は、450万円です。
<IT導入補助金の対象経費>
- ソフトウェア購入費
- クラウド利用料(※最大2年分)
- 導入関連費用(コンサル・設定・研修など)
クラウドやAI搭載の業務システム導入時の操作トレーニングやデータ活用研修も、補助対象に含まれます。
出典:IT導入補助金
ものづくり補助金
新製品の開発や生産工程の効率化を目指す製造業・サービス業には、ものづくり補助金が適しています。
中小企業庁所管の制度で、設備導入やシステム構築にかかる費用が補助対象です。補助率は通常50%ですが、特定の条件をクリアすれば約67%まで上がります。
<ものづくり補助金の上限額>
枠 | 上限額 |
|---|
製品・サービス高付加価値化枠 | 750万円〜2,500万円(特例で3,500万円) |
グローバル枠 | 3,000万円(特例で4,000万円) |
DX人材育成の観点では、IoT機器やAIシステム導入に伴う従業員の教育費用も補助対象です。申請時には事業計画書の作成が必要で、審査では新規性や実行可能性がチェックされます。
出典:ものづくり補助金
キャリアアップ助成金
契約社員やパート従業員を正社員に切り替えたい場合は、キャリアアップ助成金の活用を検討しましょう。
厚生労働省が管轄する制度で、有期契約の従業員を正社員へ切り替えた場合、1人につき最大57万円が受け取り可能です。
企業は契約社員やパート従業員にデジタルスキルを身につけさせてから、正社員へ切り替える際に利用できます。
<キャリアアップ助成金の主なコース>
- 正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 諸手当制度等共通化コース など
申請には雇用保険への加入と、キャリアアップ計画の事前提出が必要です。人材開発支援助成金との併用も検討してみましょう。
出典:キャリアアップ助成金
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
テレワーク・デジタル人材育成を行っている企業には、人材確保等支援助成金のテレワークコースが向いているでしょう。
厚生労働省が管轄する制度で、機器導入や環境整備にかかる費用の30%が補助されます。成果達成による追加支給もあり、上限額は100万円です。
<テレワークコースの対象となる取り組み>
- クラウドシステムの導入
- Web会議ツールの活用
- セキュリティ対策
- デジタルツールの操作研修
- リモートワークスキル習得のための教育 など
申請対象はテレワーク制度を新規導入する企業で、テレワーク稼働率や離職率改善などの成果要件を達成する必要があります。
出典:人材確保等支援助成金(テレワークコース)
小規模事業者持続化補助金
従業員数が少ない事業者が販路拡大やDX化に取り組む際は、小規模事業者持続化補助金が利用できます。
小規模事業者持続化補助金は中小企業庁が管轄する制度で、補助率は約67%です。WebサイトやECサイト構築に伴う従業員の教育費用も補助対象となります。
<小規模事業者持続化補助金の概要>
項目 | 内容 |
|---|
対象事業者 | 商業・サービス業:従業員5名以下製造業等:20名以下 |
補助率 | 約67% |
上限額(通常枠) | 50万円 |
上限額(賃金引上げ枠・後継者支援枠) | 最大200万円 |
インボイス特例 | 条件クリアで上限50万円上乗せ |
申請時は商工会議所などのサポートを受けて、経営計画を作成する必要があります。
出典:小規模事業者持続化補助金
DX研修の助成金を利用すべき5つの理由
DX研修助成金には、費用削減以外にもさまざまなメリットがあります。研修経費の補助に加え、賃金助成や複数回申請など人材育成を支援する仕組みが充実した制度です。
ここでは助成金を利用すべき5つの理由を解説します。
研修費用を最大75%削減できる
DX研修助成金を活用する一番の利点は、研修費用を抑えられることです。
事業展開等リスキリング支援コースや東京都DXリスキリング助成金では、中小企業は研修費用の75%まで補助を受けられます。
<研修費用の削減シミュレーション>
項目 | 金額 |
|---|
研修費用(1人10万円×20名) | 200万円 |
助成額(75%) | 150万円 |
企業の実質負担 | 50万円 |
企業は経費助成と賃金助成を組み合わせれば、研修中の従業員給与も一部カバー可能です。
10時間の研修なら1人につき最大1万円の賃金補助も上乗せされるため、コスト削減効果が期待できます。
賃金助成で従業員の給与も補填される
研修費用だけでなく、受講期間中の給与も補助対象となる点がDX研修助成金の魅力です。
人材開発支援助成金では、中小企業なら受講者1名につき時給換算で800円〜1,000円の給与補填を受けられます。10時間の研修であれば1名につき最大1万円、20名なら合計20万円が支給されます。
<賃金助成を受ける際の注意点>
- 研修は通常の勤務時間中に行う必要がある
- 休日出勤や残業時間帯の研修は補助対象にならない
- 給与アップなどの条件を満たすと助成額が上乗せされる
企業は研修後に従業員の待遇改善を計画すれば、より多くの助成を受けられる可能性があります。
複数回申請で段階的に人材を育成できる
支給上限に届くまで繰り返し申請できるため、DX研修助成金は長期的な人材育成計画に適しています。
人材開発支援助成金は1事業所につき年間1,000万円、事業展開等リスキリング支援コースは1億円が上限です。東京都DXリスキリング助成金は年間100万円まで繰り返し申請できます。
<段階的な研修の実施例>
回 | 研修内容 |
|---|
第1回 | 全社員向けのDX基礎研修 |
第2回 | データ活用の専門プログラム |
第3回 | AI実践トレーニング |
同じ従業員が異なる研修を複数回受けることもできるため、企業は各人の習熟度に応じた育成プランを組み立てられます。
返済不要で企業の財務負担が軽減される
助成金は借入とは違い返す必要がないため、企業は財務リスクなしでDX人材育成に取り組めるでしょう。
所定の条件をクリアして支給が確定すれば、受け取った金額を返す必要は一切ありません。中小企業が数百万円の研修費用を自前で用意するのは負担が大きいですが、助成金を使えば実際の出費を大幅に減らせます。
<助成金の特徴>
- 返済義務がない
- 財源は雇用保険料のため、事業主が普段支払っている保険料の一部が戻ってくる仕組み
- 受給実績があると金融機関からの評価が上がる可能性がある
受給後に不正が見つかった場合は返還を求められるため、正しい手順で研修を進めることが大切です。
DX認定取得で助成対象講座が拡大する
経産省のDX認定を取得した企業は、人材開発支援助成金「人への投資促進コース」で選べる講座の幅が広がります。
DX認定とは、企業のデジタル戦略が経営計画と連動していることを国が認める制度です。
認定を受けていない企業は、経産省の「Reスキル講座」など高度IT人材向けの一部講座しか対象になりません。
<DX認定の有無による違い>
項目 | DX認定なし | DX認定あり |
|---|
対象講座 | Reスキル講座など高度IT人材向けのみ | 幅広いテーマの講座が対象 |
研修内容の例 | 高度なプログラミング・AI開発など | 基礎ITリテラシー・部門別専門スキル |
DX認定があれば75%の助成率で多様な講座を受講できます。認定には書類申請と審査が必要ですが、助成金の活用幅を広げたい企業にはおすすめです。
DX研修の助成金利用時の注意点4つ
DX研修助成金では、書類準備の手間や支給までのタイムラグなど、ルールを事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、助成金利用時の注意点を4つ紹介します。
申請書類の準備に時間と手間がかかる
DX研修助成金の申請では、数多くの書類作成や計画立案が必要で、かなりの時間と手間がかかります。
企業は事前に職業能力開発推進者を決め、社内の能力開発計画を作成しておくことも求められます。また、人材開発支援助成金では、以下のようなさまざまな書類を提出しなければなりません。
<主な提出書類>
- 職業訓練実施計画届・訓練実施計画書
- 経費見積書
- 登記簿謄本・納税証明書
- 受講者名簿
- 職業能力開発推進者の選任届
- 事業内職業能力開発計画
初回申請の企業は準備だけで1ヶ月以上かかるケースも少なくありません。書類の不備は差し戻しの原因となるため、人事・経理・総務など複数部門で協力して進めましょう。
研修実施後の報告義務が発生する
助成金を受け取るためには、研修終了後に実績報告書の提出が義務付けられています。
実績報告書には研修内容、出席状況、支払い明細、効果測定の結果などを記入し、企業は証拠となる書類を添えて提出します。既成の研修プログラムでは、受講者が全体の8割以上を受講した証明が必要です。オリジナル研修では実施報告書が求められます。
<報告時に必要な書類>
- 実績報告書
- 受講証明書または研修実施報告書
- 賃金台帳・出勤簿
- 経費の領収書
企業は労働局の調査に備え、関連書類を5年間保管する必要があります。提出期限は研修終了後2ヶ月以内のため、研修中から書類整理を始めておきましょう。
助成金支給まで数ヶ月のタイムラグがある
研修が終わってもすぐに助成金は振り込まれません。助成金の入金には、報告書提出後から1〜2か月、長ければ3〜4か月以上かかる場合があります。
企業は研修費用をいったん自社で負担するため、助成金が届くまでの間は資金繰りに影響が出ることもあります。
<支給までのスケジュール例>
時期 | 内容 |
|---|
4月 | 研修実施 |
6月 | 実績報告書の提出 |
8月以降 | 審査完了・助成金振込 |
書類に不備があれば審査が長引くため、企業は受給までの期間を想定した資金計画を準備しておきましょう。
対象となる研修内容に制限がある
どんな研修でも助成対象になるわけではなく、内容や形式に一定のルールがあります。
対象となるのは外部機関に委託した研修で、従業員の業務に直結しDX推進につながる内容が条件です。研修時間も人材開発支援助成金は10時間以上、東京都DXリスキリング助成金は3〜10時間未満が求められます。
<助成対象外となる研修>
- ビジネスマナーや接客スキルの研修
- 趣味や教養を目的とした研修
- 通常業務と区別がつかないOJT
- 社内講師のみで行う研修
人への投資促進コースはITSSレベル3以上や経産省認定講座が条件となるなど、コースごとに対象範囲が異なります。企業は予定している研修が対象かどうか、申請前に労働局や東京しごと財団へ問い合わせておきましょう。