【2026年版】シャドーAIとは|事例やリスク、特定手法や実施したい対策


この記事の要約と結論
シャドーAIとは、会社の許可・把握なしに社員が業務でAIツール(ChatGPT等)を利用する状態。生成AIブームで誰でも使える環境が広がった結果、IT部門の見えないところでAI活用が広がる現象が急増している。身近な事例4選として議事録要約・コード生成・資料作成・翻訳などが該当
懸念される6つのリスクは「機密情報・個人情報の漏洩」「著作権侵害」「業務の属人化」「誤情報の利用」「コスト管理の崩壊」「コンプライアンス違反」。特に企業の機密データを外部AIに送信してしまうケースは、競合への情報流出・GDPR等の規制違反に直結する
シャドーAI対策は特定手法5選(ネットワーク監視・利用ログ・アンケート・ヒアリング・経費監査)で実態を把握し、対策7選(公式AI環境の整備・利用ガイドライン策定・社内研修・申請承認フロー・モニタリング・教育・例外承認制度)で公式運用に取り込むのが定石
従業員が未承認のAIツールを職場で利用する「シャドーAI」が、企業のセキュリティリスクとして急速に注目を集めています。
マイクロソフトの調査では日本のナレッジワーカーの78%がシャドーAIを行っているとされ、もはや一部の問題ではありません。情報漏洩や法令違反、ハルシネーションなどの様々なリスクを正しく理解し、組織として適切な対策を打つことが求められています。
本記事では、シャドーAIの事例やリスク、特定方法から対策までを体系的に解説します。
自社の現状と比較しながら、必要なセキュリティ体制構築のためにぜひ参考にしてください。
出典:東洋経済オンライン|シリコンバレー最前線レポート
シャドーAIとは、企業や組織の正式な承認を得ていないAIツールやサービスを、従業員が個人の判断で業務に使う行為です。ツールやサービス自体を指す場合もあり、現在では以下のようにブラウザから手軽に使えるサービスが多くあります。
「シャドー(Shadow=影)」という名称は、組織の管理が及ばない「見えない場所」で使われることに由来します。従来から問題視されてきた「シャドーIT」という概念が、AI領域に拡張して生まれた言葉です。
悪意からではなく、ほとんどが業務効率化や生産性向上のための善意による行動である点が特徴といえるでしょう。だからこそ組織に見過ごされやすく、対策が後手に回りやすい課題でもあるのです。
ここでは、混同されやすいシャドーAIとシャドーITの違いを解説します。
シャドーAIとシャドーITの共通点は、どちらも「組織の承認なく従業員が独自に導入・利用する」という点です。しかし、対象となるリスクの範囲や性質に明確な違いがあります。
<シャドーAIとシャドーITの違い>
比較項目 | シャドーIT | シャドーAI |
対象範囲 | IT全般 | ・AIツール |
主なリスク | ・ネットワーク脅威 | ・情報漏洩 |
リスクの波及範囲 | ・利用部門 | ・組織全体 |
位置づけ | ・IT領域全般の管理外利用 | ・シャドーITの一種 |
シャドーITは、デバイス・アプリケーション・クラウドサービスなどの情報技術(IT)全般を対象とした概念です。主なリスクはネットワークセキュリティの脅威やデータ侵害に集中し、利用した部門や個人に留まりやすい傾向があります。
一方、シャドーAIはAIツールやサービスに特化した概念です。AIによる入力情報の再利用(情報漏洩)、誤った情報の生成(ハルシネーション)、著作権侵害などAIならではのリスクが生じます。
さらに、リスクが個人や部門を超え、組織全体へ波及しやすい点も大きな問題といえるでしょう。シャドーAIはシャドーITの一種ですが、より複雑で深刻なリスクが潜む、現代特有の課題として認識が広まっています。
組織としてシャドーAIを正しく理解し、シャドーITとは別の視点での対策が求められるでしょう。
シャドーAIが急速に広がった背景には、以下のように複雑な要因が絡み合っています。
ここでは、シャドーAIの概念が生まれた背景を3つの観点から解説します。
シャドーAIが広がった最大の要因は、誰でも無料で手軽に使える生成AIツールの急速な普及です。
ChatGPTを代表とする生成AIは、専門知識がなくてもブラウザからすぐにアクセスできます。さらに、以下のような多岐にわたる業務を大幅に効率化できる点が、多くの従業員を惹きつけているのです。
<生成AIで効率化できる業務の一例>
総務省が2025年7月に公表したデータによると、何らかの業務で生成AIを活用する日本企業は55.2%と過半数を超えました。現場レベルでの浸透の高さが数字として明確に表れています。
従業員がAIの利用効果を実感すると、会社の正式な承認を待たずに独断で使ってしまいがちです。手軽さと業務への即効性が、シャドーAIの拡大を加速させたといえるでしょう。
出典:総務省|令和7年版 情報通信白書|企業におけるAI利用の現状
近年の生成AIの普及スピードに対し、多くの企業ではいまだにAIガバナンスの整備が追いついていないのが実情です。実際に、IT部門や経営陣によるAI導入の検討や審議を待てず、現場の従業員が独断で使い始めるという構図も生まれています。
ガートナージャパンが2024年9月に公表した調査でも、シャドーITは今後も増える見込みです。背景には、ITベンダーへの高いニーズに対するIT部門の慢性的な人材不足があると指摘されています。
また一般社団法人AIガバナンス協会の「AIガバナンスナビ」による2025年9月の調査では、企業の診断結果に多くの課題が見られました。個人情報など既存ルールの応用には一定の進捗が見られるものの、AI特有の継続的な管理は道半ばとの結果です。
企業のガバナンス構築がAI技術の進化に追いつかない現状が、改めて浮き彫りになっています。
<出典>
シャドーAIは一部の従業員だけの問題ではなく、組織全体に広がる構造的な課題として認識する必要があります。
マイクロソフトの調査では、日本のナレッジワーカーの78%が職場で無許可のAIツールを利用していると回答しました。アメリカの63%と比較すると、15ポイントも上回る数値です。
<日本とアメリカのAI意識ギャップ(マイクロソフト調査)>
項目 | 日本 | アメリカ |
ナレッジワーカーの無許可AIツールの利用率 | 78% | 63% |
リーダー層による従業員のAIスキルへの無関心率 | 65% | 35% |
また同調査では、日本のリーダー層の65%が、採用する人材のAIスキルの有無に無関心であると判明しました。経営層のAI戦略への意識の低さが、シャドーAI拡大と外部ツールへの依存、人材育成の停滞を後押ししている構図が見てとれます。
さらに、コーレ株式会社が2024年10月に行った調査では、回答者の約半数が会社に許可されていない生成AIを業務で使った経験がありました。しかも、機密情報だと認識しつつ情報を入力したケースも約1割存在したのです。
上記の数字が示すとおり、シャドーAIはすでに多くの組織における深刻な課題となっています。
<出典>
シャドーAIは、特定の職種や部門だけに起きる問題ではありません。文書作成から顧客対応、開発現場や人事採用まで、あらゆる業務領域で静かに広がっています。
ここでは、職場で実際に起きているシャドーAIの代表的な4つの事例を見ていきましょう。
最も多く見られるシャドーAIの事例が、無許可の生成AIを業務文書に活用するケースです。たとえば以下のような日常業務に、個人アカウントで登録した無料版ChatGPTやGeminiが使われるケースが目立ちます。
<日常業務にシャドーAIが利用される主なケース>
一見すると業務効率化に貢献しているようですが、文書に顧客情報や社内の未公開情報、取引先の機密が含まれていた場合は話が変わります。入力した情報はAIサービスのサーバーに送信されるため、意図しない情報漏洩につながるリスクがあるからです。
特に無料版のAIサービスでは、デフォルトで入力データがAIモデルの学習に利用される設定である場合も少なくありません。便利さの裏に潜むリスクを、企業として見過ごせない状況となっています。
顧客対応の現場でも、シャドーAIの利用実態が確認されています。主な例は以下の通りです。
<顧客対応にシャドーAIが利用される主なケース>
ZendeskのCXトレンドレポートでは、カスタマーサポート担当者の約50%がシャドーAIを使用しているというデータがあります。顧客対応現場への深刻な広がりが数字として表れているといえるでしょう。
問題は、顧客の氏名・連絡先・クレーム内容といった個人情報を含むデータが、無許可のAIサービスに入力されてしまう点です。故意でなくとも、万一流出してしまうと個人情報保護法や秘密保持契約の違反になりかねません。
承認されたツールがないまま現場が独自に課題を解決しようとする行為が、大きなリスクを生み出しているのです。
出典:Zendesk|シャドウAIとは?未承認AIのリスクと企業が取るべき対策
企業の開発現場でも、シャドーAIによる情報漏洩リスクは深刻な状況です。
たとえば、AIコーディングアシスタントを使ったバグ修正や機能実装の効率化は、エンジニアの間では珍しくありません。しかし、自社の機密ソースコードや設計情報を、無許可のAIサービスに入力してしまうケースが問題となっています。
2023年4月には、世界的な大手電機メーカーで実際に事件が起きました。
<サムスン電子・ソースコード流出事件の概要>
項目 | 内容 |
発生時期 | 2023年4月 |
発生企業 | 世界的な大手電機メーカー |
概要 | エンジニアが機密ソースコードをChatGPTにアップロードし外部に漏洩 |
企業の対応 | 従業員による生成AI利用を社内で禁止 |
エンジニアがChatGPTにアップロードした社内の機密情報が、外部に漏洩したのです。
事件後、企業は社内での生成AIの利用を禁止しましたが、開発現場でのシャドーAIのリスクが広く知れ渡るきっかけとなりました。
企業独自の技術や競争力の源が外部に流出し得るため、製造業やIT企業が特に警戒すべきリスクなのは間違いないでしょう。
出典:JBサービス|シャドーAIとは?業務上のリスクや事例、対策方法を解説
採用・人事の領域でも、担当者が独断で業務にAIツールを利用する事例は見られます。
典型的な例は以下の通りです。
<採用・人事業務でシャドーAIが利用されるケース>
Zendeskは、採用候補者の選考に使われる人事用AIツールが、様々な業界でシャドーAIとして使用されていると明示しています。応募者の氏名や経歴など個人情報を無許可のAIサービスに入力すると、個人情報保護法に抵触してしまうため注意が必要です。
また、AIによるバイアスがかかった評価をそのまま人事評価に使うと、公平性や根拠の説明という観点からも問題が生じます。金融庁のAIディスカッションペーパー(2025年3月)でも課題とされている事例で、見逃せないリスクの一つです。
<出典>
シャドーAIが問題視される理由は、情報漏洩だけではありません。法令違反や誤情報の拡散、サイバー攻撃の入口となるリスクまで、企業経営を揺るがす脅威は様々です。
ここでは、シャドーAIによって懸念される代表的な6つのリスクについて解説します。
シャドーAIがもたらす最も深刻なリスクは、入力した情報がAIの学習データとして取り込まれることで起きる情報漏洩です。
生成AIサービスの中には、利用者が入力したプロンプトの内容をモデル改善の学習に活用するものがあります。無料版に多く見られる傾向で、特に注意が必要です。
また以下のような情報が入力された場合は、将来的に別の利用者への回答に含まれてしまう重大なリスクがあります。
<特に注意が必要な入力情報>
デジタル庁が2025年3月に公表したガイドラインでも、約款型クラウドサービスでは要機密情報を取り扱えないと明記しています。定型約款などへの同意のみで利用できる生成AIでは、必要十分なセキュリティ要件を満たすことが一般的に困難だからです。
管理されない環境で情報を入力するシャドーAIがいかに危険かを、公的機関が明示した例といえるでしょう。
一度AIに学習されたデータの消去は技術的に難しく、問題が発覚した時点で手遅れなケースも少なくありません。情報の入力には十分注意し、管理を徹底しましょう
出典:デジタル庁|ChatGPT 等の生成 AI の業務利用に関する申合せ(第 2.1 版)
シャドーAIの利用は、国内外の法規制に抵触するリスクもはらんでいるため注意が必要です。従業員が顧客の個人情報や取引先の機密情報を未承認のAIツールに入力した場合、以下のような法律に違反する可能性があります。
<シャドーAIで抵触する可能性のある法律>
金融庁も報告書の中で、個人情報保護や情報セキュリティ、サイバーセキュリティが大きな課題だとしています。特に機密情報の取り扱いには慎重な対応が求められるでしょう。
また、取引先との秘密保持契約(NDA)への違反や、業界固有のガイドライン違反が生じる可能性もあります。
たとえ業務効率化のための善意の行為であっても、コンプライアンス違反は企業の信頼失墜・法的責任・罰金に直結しかねません。悪意の有無にかかわらず、結果として重大な問題に発展し得る点で軽視できない問題なのです。
出典:金融庁|AIディスカッションペーパー
事実と異なる情報をさも正しいかのようにAIが生成する「ハルシネーション」は、シャドーAIのリスクの中でも特に深刻といえるでしょう。
会社に管理された公式ツールであれば出力内容の検証・承認ステップを設けられますが、個人判断で使われるシャドーAIでは不可能です。
たとえば、以下のようなリスクが考えられます。
<ハルシネーションによるシャドーAIのリスク>
金融庁のAIディスカッションペーパーでも、ハルシネーションは生成AIならではの新たな課題だと位置づけられています。誤情報が対外的に発信されてしまうと、企業のブランドイメージや取引先との信頼関係に深刻なダメージを与えかねません。
日常業務においても、出力内容が本当に正しいかを検証する管理体制の構築が求められています。
出典:金融庁|AIディスカッションペーパー
シャドーAIには、生成したコンテンツが既存の著作物と類似していた場合、企業が意図せず著作権侵害の当事者となるリスクもあります。
たとえば、以下のようなリスクが挙げられます。
<シャドーAIによる著作権・知的財産権の侵害リスク>
生成AIは膨大なデータを学習しているため、生成物が既存の著作物を模倣している可能性は否定できません。
もし組織に公式に導入されたAIツールであれば、契約にあたり利用条件や著作権ポリシーを事前に確認できます。しかし、個人が未承認で使うシャドーAIでは確認のステップが省かれる場合が多いため、気付けないのです。
さらに、企業の知的財産が万一AIの学習データに使われた場合、競合他社や別の利用者への回答に情報が反映されるリスクもあります。
デジタル庁の報告書でも著作権を含むリスクへの組織的対応が求められており、知的財産保護の観点からも急務であるといえるでしょう。
出典:デジタル庁|ChatGPT 等の生成 AI の業務利用に関する申合せ(第 2.1 版)
シャドーAIはセキュリティ管理の外側で行われるため、企業全体のセキュリティに新たな脆弱性を与えてしまいます。
IT部門が把握していないAIツールには、セキュリティチェックやアクセス制限が適用されません。よって、もしツール自体に脆弱性があった場合、企業ネットワークへの不正アクセスの入口となるリスクがあるのです。
また、AIに悪意ある入力を仕込んで不正動作を起こす「プロンプトインジェクション」があった場合、マルウェアの感染経路となるリスクもあります。
<シャドーAIにおける不正アクセスのリスク>
IPAが2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて3位にランクインしました。AIを介したサイバー攻撃のリスクが、社会全体で認識されるレベルに達したと考えるべきでしょう。
<情報セキュリティ10大脅威2026(組織向け)>
順位 | 脅威 | 前年からの変動 |
1位 | ランサム攻撃による被害 | 変動なし |
2位 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 | 変動なし |
3位 | AIの利用をめぐるサイバーリスク | 新規ランクイン |
出典:IPA|情報セキュリティ10大脅威2026
シャドーAIが組織内に広がると、セキュリティインシデント発生時に原因の特定や被害範囲の把握が著しく困難になります。
主な要因とインシデント発生時のリスクは以下の通りです。
<シャドーAIにおけるインシデント発生時のリスク>
シャドーAIはIT部門が利用状況を把握していないため、「誰が・どのツールを・どのようなデータで・いつ使ったか」を素早く追跡できません。結果として、初動対応が後手に回りやすくなります。
また、通常のITツールに比べ出力内容に意図しない情報が含まれたり、学習データが外部に渡る経路が複雑です。つまり、追跡調査そのものが困難になる構造的なリスクの存在も否定できません。
対応が遅れるほど被害は拡大し、顧客や取引先への説明も難しくなるものです。
ガートナージャパンの調査でも、ビジネス部門主導のIT調達ではセキュリティ評価の不足が最大の課題だとされています。管理外ツールがもたらすリスクへの備えの重要性が示されたといえるでしょう。
出典:Gartner|Gartner、デジタル・トランスフォーメーションの取り組みにおける「シャドーIT」の現状に関する調査結果を発表
シャドーAIへの対策を講じるには、まず社内でどのようなAIツールが使われているかを正確に把握する必要があります。技術的な監視手法と人的なアプローチを組み合わせることが、実態把握への近道です。
ここでは、シャドーAIを特定するための代表的な方法を5つ解説します。
社内ネットワークの通信記録の監視は、シャドーAIの利用実態を把握するうえで有効な手段です。ネットワークログやプロキシログを分析すると、従業員がどのAIサービスに・いつ・どの程度アクセスしているかを可視化できます。
さらに、Zscalerが推奨するようなSSEや、後述するCASBなどのセキュリティソリューションとの組み合わせも有効です。未承認AIサービスへのトラフィックをリアルタイムで検出・警告するセキュリティ体制を構築できるでしょう。
<シャドーAIへのアクセスの可視化に有効な手段>
また、監視体制の整備を従業員に周知すると、シャドーAIの心理的な抑止効果も期待できます。
ただし、監視の実施にあたっては、従業員のプライバシー保護と社内規程との整合性を事前に確認することが前提です。AIガバナンス協会の事例報告(2026年)でも、AIユースケースの捕捉・可視化は、ガバナンス先進企業における重要課題として挙げられています。
出典:⼀般社団法⼈AIガバナンス協会|⼀般社団法⼈AIガバナンス協会における AI事業者ガイドライン活⽤事例
従業員のPCやスマートフォン内のアプリを一元管理するエンドポイント管理ツールも、シャドーAIの特定に効果を発揮します。
たとえば、LANSCOPEの「エンドポイントマネージャークラウド版」のような製品です。同製品は、管理下のデバイスにインストールされたアプリの一覧を確認したり、操作ログを取得したりできます。つまり、従業員がどのAIツールをいつ利用しているかを把握できるのです。
さらに、ChatGPTへの書き込み内容(プロンプト)を操作ログとして記録する機能も備えています。機密情報が入力されていないか後で確認するような活用も可能となるでしょう。
<エンドポイント管理ツールで把握できる主な情報>
デバイスレベルでの監視は、ネットワーク上の監視との併用でより網羅的なシャドーAI検出体制の構築を可能にします。ツール導入後は定期的にログを確認し、不審な利用の早期発見に役立てることが大切です。
出典:LANSCOPE|シャドーAIとは?知っておくべきリスクや企業が取るべき対策を解説
CASB(Cloud Access Security Broker)は、企業ネットワークとクラウドサービスの間に位置するセキュリティソリューションです。利用中のSaaSやAIサービスを自動的に検出・評価します。
また、未承認のAIサービスへのアクセスを検知してブロックしたり、リスク評価に基づいてポリシーを適用するなども可能です。
さらに、近年注目を集めているAI-SPM(AI Security Posture Management)も優れた機能を持ちます。組織内で使われているAIモデルや設定を追跡し、未承認の展開や危険なアクセスパターンを可視化できるのが特徴です。
<シャドーAI対策に有効な主なセキュリティソリューションサービス>
サービスの種類 | 主な機能 |
CASB | ・利用中のSaaSやAIサービスを自動で検出・評価 |
AI-SPM | ・利用中のAIモデルや設定を追跡し、未承認の展開や危険なアクセスパターンを可視化 |
両ツールを組み合わせると、「誰が・どのAIを・どのデータと組み合わせて使っているか」の継続的な監視が可能です。Zscalerも、シャドーAIのリスクを最小化する方法として、上記のような機能を統合したプラットフォームの活用を推奨しています。
出典:Zscaler|シャドーAIとは
技術的な監視ツールだけでは見えにくいシャドーAIの実態を把握するには、従業員への直接的なアンケートやヒアリングも有効です。匿名形式のアンケートを実施すると、普段は表面化しにくい「実は使っている」という声を集めやすくなります。
各部門へは、以下のようなヒアリングを行いましょう。生の声を聞くと、システム上の検出では見えない利用実態を浮き彫りにできます。
<シャドーAIの把握に有効なアンケート・ヒアリング内容>
Zscalerも、組織内のシャドーAIを特定する手順として「従業員からの聞き取り」を推奨しています。アンケートは従業員のAI活用ニーズを知る機会にもなるため、公式ツールや利用ポリシーの見直しにもつなげられるでしょう。
シャドーAIの特定には、技術的アプローチと人的アプローチを組み合わせた多角的な把握が重要なのです。
出典:Zscaler|シャドーAIとは
アクセスログと権限管理情報の照合も、シャドーAIの特定に有効なアプローチです。
以下のような異常パターンを検出できるでしょう。
<アクセスログと権限管理情報の照合で検出できる異常パターン>
たとえば、SIEM(Security Information and Event Management)ツールはアクセス管理に適しています。システム全体のログを集約・分析して、シャドーAIの利用と一致するパターンを自動的に洗い出すことが可能です。
定期的な脆弱性スキャンとアクセス制御を併用すれば、新規・既存を問わずAIツールの設定ミスや不正利用の兆候を早期発見できます。
Zscalerも示すように、アクセスログの確認はシャドーAI特定の重要なステップだといえるでしょう。
出典:Zscaler|シャドーAIとは
シャドーAIへの対策は、ツールの導入だけで完結するものではありません。ガバナンス体制の整備からガイドラインの策定、従業員教育や技術的な制御まで、多層的なアプローチが必要です。
ここでは、組織としてすぐに着手できる7つのシャドーAI対策について解説します。
シャドーAI対策の根幹となるのは、組織全体のAIガバナンス体制の構築と、AIツール導入に関する承認プロセスの明確化です。
業務でAIツールを利用する際は、以下の3つの観点から評価・承認するフローを事前に設定することが重要となります。「誰がどのような責任と権限を持つか」を明文化しておきましょう。
<AIツールの業務活用に必須の3つの観点>
AIガバナンス協会の「AIガバナンスナビ」では、AIユースケースの把握・整理と社内ルールの明文化をガバナンス構築の基本としています。経営層のリーダーシップのもと、推進が求められるでしょう。
また、AIガバナンス委員会などルールを定期的に見直す専門組織の設置も、AI関連の技術や制度の変化に対応する手段として有効です。ガバナンスの形骸化を防ぐためにも、継続的な運用体制の確立が欠かせないでしょう。
出典:⼀般社団法⼈AIガバナンス協会|⼀般社団法⼈AIガバナンス協会における AI事業者ガイドライン活⽤事例
社内ガイドラインの策定は、シャドーAI対策として最も基本的かつ実効性の高い取り組みです。ガイドラインには、以下の項目を具体的に明記する必要があります。
<社内AIガイドラインに盛り込むべき主な項目>
IPAが公表したガイドラインでも、業務で生成AIを使う際は社内ガイドラインの整備が不可欠であると明示されています。ガイドラインが整っていないと、従業員が自己判断で重要な情報を入力してしまうリスクが高まるとの指摘も見逃せません。
社内ガイドラインは、技術や法制度の変化に合わせて定期的に更新しましょう。
出典:IPA 独立行政法人情報処理推進機構|テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン
自社のAI利用方針を策定する際には、国内の主要機関が公表している公的ガイドラインの参照や活用がおすすめです。
たとえば、以下のようなものが参考になるでしょう。
<公的機関が公表するAIガバナンスのガイドライン>
公表機関 | 内容・特徴 |
デジタル庁 | ・約款型クラウドサービスに分類される生成AIでは要機密情報の取り扱いは不可能 |
金融庁 | AIガバナンス構築の事例と課題を整理・提示 |
総務省・経済産業省 | AIガバナンス構築に必要な取り組み項目を体系的に整理・提示 |
一般社団法人AIガバナンス協会 | 公的ガイドラインとの対応関係を可視化するツールとして活用可能 |
金融庁の「AIディスカッションペーパー」は、AIガバナンス構築の事例や課題が整理されており、業種を問わず参考にできる内容です。
またAIガバナンス協会の「AIガバナンスナビ」は、上記のようなガイドライン活用時に対応関係の可視化ツールとしても利用できます。
いずれもAIガバナンス構築に役立つ考え方や取り組むべき内容が整理されているため、自社の状況に合わせてぜひ参考にしてください。
<出典>
シャドーAIの発生を防ぐうえで効果的な対策の一つが、企業がセキュリティ要件を満たした公式AIツールを用意することです。
従業員がシャドーAIを使う背景には、「活用したいのに使える環境が整っていない」という現場のニーズがあります。現実として存在するニーズに応えないまま禁止だけを徹底しようとすると、かえって見えない場所での利用を促進しかねません。
金融庁の報告書でも、従業員の業務効率化ニーズに応えるAIツールの整備がシャドーAI対策の一つとして位置づけられています。組織として承認済みの公式ツールに利用を集約すれば、リスク管理と監視も一元化できるでしょう。
またツール選定時は、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やISMSクラウドセキュリティ認証など、信頼性の高いセキュリティ基準を満たすかどうかも大切です。
従業員が安心して使えるAI環境を用意し、シャドーAIを防げるセキュリティ体制を作りましょう。
出典:金融庁|AI ディスカッションペーパー(第 1.0 版)
シャドーAIへの技術的な対策としては、DLP(Data Loss Prevention)とWebフィルタリングの組み合わせが有効でしょう。
<シャドーAI対策に有効な技術>
種別 | 機能 |
DLP | 機密情報や個人情報が外部サービスへアップロードされるのを自動で検知・ブロックして防ぐ |
Webフィルタリング | インターネットアクセスを制御し、特定のWebサイトやAIサービスへのアクセスそのものをブロックまたは警告する |
DLPは、外部サービスへの機密情報や個人情報のアップロードを自動的に検知・ブロックする技術です。従業員が意図せず生成AIに機密データを入力しようとした場合でも、アップロードを未然に防げます。
一方Webフィルタリングは、特定のWebサイトや未承認のAIサービスへのアクセス自体を制限する技術です。AIサービス全般をカテゴリ単位でブロックしたり、特定の部署や役職だけに利用を限定するなど柔軟な運用ができます。
また、完全なブロックだけでなく、警告を表示して注意喚起するなどの段階的なアプローチも可能です。
加えて、次々と登場する新しいAIサービスに合わせて、フィルタリングルールは定期的に更新すべき点にも十分留意しましょう。
上記のような技術的な対策は、セキュリティポリシーや従業員教育と併せて運用して初めて効果を発揮します。多角的なアプローチで実効性のあるシャドーAI対策を行いましょう。
セキュリティポリシーや技術的な対策と同様に重要なのが、従業員一人ひとりのAIリテラシー向上を図る継続的な教育です。
シャドーAIが広がる背景の一つに、従業員がAIの利用に伴うリスクを十分に理解していないという現実があります。
研修を行う際は、以下の点を踏まえるとよいでしょう。
<AIリテラシー研修で教えるべき内容と伝え方>
リスクの種類 | ・情報漏洩 |
効果的な伝え方 | 各リスクについて具体的な事例を交えて解説する |
特に、様々なリスクについて具体的な事例を交えて解説すると効果的です。
たとえば、ChatGPTに入力したソースコードが流出したサムスン電子の事例は、リスクの深刻さが伝わって分かりやすいでしょう。
全国銀行協会が金融庁のAI官民フォーラム(2025年6月)で提出した資料でも、AI人材の現状が指摘されています。AI活用の重要課題として専門人材の確保・育成が挙げられており、業界を問わず認識されている問題だといえるでしょう。
AIの技術は急速に進化し続けるため、一度きりでなく定期的な研修の実施も必要です。新たな脅威やAIに関わる制度の動向を継続的に社内共有する仕組みを整え、長期的なリスク低減につなげましょう。
一般社団法人全国銀行協会|全国銀行協会 説明資料
シャドーAI対策で見落とされやすい視点が、「禁止」から「管理」への発想の転換です。
生成AIを一律に禁止すると、業務効率化の機会を失うばかりか、隠れてAIを使うリスクがむしろ高まるとの声もあります。
禁止ではなく管理が有効であることは、以下のレポート内容からも窺えるでしょう。
<AIの管理体制の必要性を示す資料>
資料 | 記述内容 |
Zendesk | CX先進企業の93%が、承認されたAIツールの活用が従業員をリスクの高い非公認ツールに頼らせないために重要であると回答 |
金融庁 | リスクを上回るAIの便益を無視して良質なサービスを行わない「チャレンジしないリスク」も踏まえながら、経営陣の適切なリスクコントロール下で顧客利便性や業務効率化の向上を図るべきと指摘 |
Zendeskのレポートにあるデータは、承認された公式AIツールの用意こそがシャドーAIの抑止に直結すると示しています。
また金融庁のレポートでは、AIのリスクと有用性を踏まえたリスクベース・アプローチによる管理を促す視点が評価できるでしょう。
重要なのは、一律の禁止ではなく、用途やリスクの大きさに応じた適切な管理体制の構築です。禁止から管理へのシフトは、AI時代における企業運営の新たなスタンダードになりつつあるといえるでしょう。
<出典>
シャドーAIは、規模や業種を問わずあらゆる企業に関わるリスクです。導入・対策を検討するにあたって、「なぜ問題なのか」「自社にも当てはまるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
ここでは、シャドーAIについてよく寄せられる疑問をQ&A形式で解説します。
シャドーAIの根本的な問題点は、企業がリスクを把握・管理できない環境でAIが業務に使われる「不可視性」です。管理の目が行き届かないまま放置されると、複数の深刻なリスクが同時発生し得る状況が生まれてしまいます。
具体的には、以下のようなリスクが挙げられるでしょう。
<シャドーAIの放置で起こり得るリスク>
IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて3位にランクインしました。シャドーAIは、もはや企業にとって無視できない経営課題として社会に認知されているのです。
従業員に悪意がなくても、結果として企業に深刻な損害をもたらす可能性がある点が、シャドーAI問題の本質といえるでしょう。
出典:IPA|情報セキュリティ10大脅威2026
最も知られている事例が、2023年4月に発生したサムスン電子による機密ソースコードの流出事件です。
同社のエンジニアが社内の機密ソースコードをChatGPTにアップロードして業務を進めた結果、情報が外部に漏洩しました。事件を受け、同社は従業員による生成AIの利用を社内で禁止する措置を取っています。
もう一つは、2023年11月に起きたWrtn Technologies社が運営する対話型生成AIサービス「リートン」の事例です。
同事件では、ユーザーが入力したプロンプトの内容を第三者が取得・編集できる状態になっていたことが発覚しました。ユーザーからの通報で発覚し、原因はデータベースシステムの設定の不備であったと発表されています。
上記はいずれも、生成AIの利用管理を誤ったために生じた情報漏洩リスクの例です。組織で管理されないままAIを使い続ける状況が、いかに深刻な事態を引き起こすかを示しています。
出典:JBサービス|シャドーAIとは?業務上のリスクや事例、対策方法を解説
BYOAI(Bring Your Own AI)とは、従業員が個人で契約・利用しているAIツールを業務で使う行為です。シャドーAIと混同されやすいですが、両者の最大の違いは「企業の承認を受けているかどうか」という点にあります。
BYOAIは、企業が利用を把握・承認したうえで行われる個人ツールの業務活用です。一方、シャドーAIは企業の承認なく行われる無許可の利用を指します。
つまり、BYOAIは企業の管理下に置かれた正規の利用形態です。
<シャドーAIとBYOAIの違い>
比較項目 | シャドーAI | BYOAI |
企業の承認 | なし(無許可) | あり(承認済み) |
管理状況 | 企業が把握していない | 企業の管理下にある |
リスク | 高い | 低い |
位置づけ | 問題のある利用形態 | 正規の利用形態 |
ただし現実には、BYOAIとして使い始めたツールが承認を経ずにそのままシャドーAI化してしまうケースも少なくありません。両者の境界線は曖昧になりがちなため、問題を複雑にしているのです。
シャドーAIをBYOAIへ転換していくためには、従業員のニーズの把握と承認フローの整備が有効な手段となるでしょう。
シャドーAIのリスクは大企業だけの問題ではありません。中小企業においても同様のリスクが存在します。
むしろ中小企業ではIT専門の部門がない場合が多く、従業員によるAIの利用を管理・監視する体制が整っていません。シャドーAIが見過ごされやすい環境が多いのです。
中小企業にとって、顧客情報や取引先の機密情報を漏洩させた場合のリスクは、経営を直撃する致命的リスクとなるでしょう。
<情報漏洩で企業がさらされる致命的なリスク>
ガートナージャパンの調査(2024年)でも、IT専門の人材不足によってシャドーITは今後も増加すると見込まれています。中小企業こそ対策の優先度を高める必要があるのです。
また、金融庁の報告書(2025年)を見ても、中小企業を含む様々な規模の金融機関がAIを活用している実態が分かります。
企業規模にかかわらず、早急なガバナンス整備が求められているのは明らかです。まずは社内で使われているAIツールの棚卸しを行い、シンプルな利用ガイドラインの策定から始めましょう。
<出典>
シャドーAIは、悪意のない従業員の行動から生まれながらも、情報漏洩など企業経営を大きく揺るがすリスクをはらんでいます。しかし、現場のニーズを把握せずにただ禁止するだけでは、かえって隠れた利用を促進しかねません。
企業が取るべき核心的な対策は、AIの利用を「禁止」するのではなく「管理」する体制づくりへのシフトです。ガイドラインの整備・公式ツールの導入・従業員教育などの多角的なアプローチが、シャドーAIの発生を根本から抑制します。
業界や企業規模にかかわらず、シャドーAIはもはや企業が無視できない最重要課題です。まずは社内でのAIの利用実態を把握するところから始め、従業員が安心してAIを使えるセキュリティ体制の構築を目指しましょう。

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